40歳以上で膝が痛む方の多くは変形性膝関節症と言われています。全国で800万人が悩んでいると言われるぐらい膝の痛みの代表です。今回は、変形性膝関節症についてくわしく説明し予防や治療法をお伝えします。
そもそも変形性膝関節症とは、どのような病気なのでしょうか。テレビのCMでもやっているのでなんとなく膝の関節の軟骨がすり減って痛むと思っている方が多いのではないでしょうか。簡単に説明すると、年齢とともに膝の軟骨の質が悪くなり、少しずつすり減り、歩く時に膝に痛みが出る病気です。
最初は階段の昇り降りだけ膝が痛むとか、歩くのはの大丈夫だけど正座が痛くてできないなどの症状から始まります。これが初期の変形性膝関節症の症状です。ここからさらに変形性膝関節症が進んでしまうと、次第に骨の変形がきつくなりO脚になっていきます。そして、階段の痛みや正座ができないというだけでなく、普通に歩く時にも膝に体重を乗せる度に痛むようになります。家事や旅行など日常生活で痛みを常に感じるようになると変形性膝関節症が進んできてしまっているサインと言えます。
実は、変形性膝関節症でよく聞く「軟骨がすり減って痛い」という表現は正しくありません。実は関節軟骨は血管や神経のない組織なので、叩いたり割ったりしても痛みを感じないのです。そう、関節軟骨のみの問題であれば本来は痛みを感じないはずです。
では、なぜ膝関節が痛むのでしょうか。難しい説明は割愛しますが、関節を包んでいる袋の滑膜に炎症が広がることで起こると言われています。また、O脚が進むと筋肉にかかる負担のバランスが崩れてしまい過剰に筋肉が収縮して痛みを引き起こしてしまいます。他にも、先ほど関節軟骨は神経や血管はないので痛みを感じないと説明しましたが、変形性膝関節症の方は本来あるはずのない欠陥や神経が関節軟骨の中にトンネルを掘って侵入しているという報告があります。
<論文1>Sunita Suri. Neurovascular invasion at the osteochondral junction and in osteophytes in osteoarthritis. www.annrheumdis.com.1423-1428,2007
関節軟骨は一度すり減ると二度と元には戻らないと言われています。近年では再生医療が進んでいますが現在ではまだまだ難しい状況です。ですが、先ほど変形性膝関節症の方には本来関節軟骨にはないはずの神経や血管が入り込んでいるという報告があるという論文が出ているという話をしました。血管や神経がなぜ入り込むのかということを考えてみると、損傷した組織を治すためではないかと個人的に推察しています。傷ついた組織に血管を通して栄養を送り損傷した組織を治そうとしているのではないかと・・・。
変形性膝関節症では、まずは膝に負担のかかる動きを避けるようにすることになります。階段の昇り降りや正座など膝に負担のかかる動作を極力やらないようにします。杖や手すりを使うことで負担を和らげるようにするのも効果的です。負担がかからない状況を作ることで関節軟骨の安静を保ち、修復する時間を作ってあげるということです。ですが、注意が必要です。それが痛みの悪循環。痛みを恐れるあまり安静が逆効果になってしまう場合があります。
痛いから安静にする→動かないことで筋力が落ちる→筋力が落ちることで衝撃吸収能力が落ちる→関節軟骨にかかる負担が増える→変形性膝関節症がさらに進む
このように安静にし過ぎてしまうことで余計に変形性膝関節症が悪化してしまうということが起こってしまう場合があります。
変形性膝関節症の治療としては手術などありますが、基本的にはまずは運動療法などの筋肉に対する治療が第一選択となります。筋肉の治療としては大きく2つ。筋肉を緩めることと筋力をつけることです。
1 筋肉を緩める
体重や重力がかかっている膝関節を支えている筋肉には負荷が常にかかっています。O脚になっている方では内側と外側の筋肉では負荷のかかり方が大きく変わってしまいます。不安定な膝関節を支えるために大腿四頭筋(膝の前の筋肉)などは収縮し硬くなって痛みを出します。変形してしまった骨の形は変えることはできませんが、過剰に収縮している筋肉を緩めることは痛みを和らげることにつながります。
2 筋肉をつける
変形性膝関節症の方は多くの場合膝のお皿の内側の筋肉が萎縮(小さくてげっそりと痩せてしまっている状態)してしまっています。筋肉は衝撃を吸収する役割がありますので、筋肉が痩せると膝関節にかかる負担が増えることになります。痩せてしまった筋肉を元に戻すことは膝を安定させることにつながります。まずはベッド上でできる簡単なエクササイズから始めましょう。
ORGANIC鍼灸整骨院では変形性膝関節症の治療として上記にあげた2つの筋肉治療をしています。痛みを引き起こしている筋肉に対してトリガーポイントという痛みの原因を手技で取り除いたり、針治療や超音波治療で痛みをとります。そして、筋肉をつけるためにベッド上で行えるエクササイズや自宅でできるセルフケアを指導しています。
執筆者 はせべ鍼灸整骨院院長 長谷部俊
鍼灸師 / 柔道整復師 / 柔道整復師専科教員
国家資格である鍼灸師と柔道整復師を取得。
大阪にある整形外科のリハビリテーション科、小児整形外科で従事。
柔道整復師専科教員の資格を取得後、結婚を機に徳島県に帰省し、2009年はせべ鍼灸整骨院を開院。
分院に名西郡石井町にORGANIC鍼灸整骨院 石井院、徳島県板野郡藍住町に徳島藍住整骨院がある。
痛みの施術を専門に年間のべ15000人以上の患者が来院する。
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